M&A基礎知識

「黒字廃業」と「後継者不足問題」の関係性と解決策

「黒字廃業」と「後継者不足問題」には密接な関係があり、特に日本の中小企業において、これらの問題が相互に影響を与え合っています。具体的には、後継者不足が原因で黒字の企業が廃業に追い込まれるケースが増えており、この現象は経営の持続可能性に大きな影響を与えています。本コラムで、その関係性をさらに詳しく解説します。


1. 「黒字廃業」とは?
「黒字廃業」という言葉は、文字通り「利益を上げているにもかかわらず、廃業すること」を指します。一般的に、企業が廃業する理由としては「経営不振」や「業績の悪化」が多く言われますが、黒字廃業の場合は、企業が利益を上げているものの、別の理由で事業を継続できなくなり廃業するという特殊なケースです。
黒字廃業の典型的な原因として以下が挙げられます:
  • 後継者不足:事業を引き継ぐべき後継者がいない、または後継者が事業承継に興味を示さない。
  • 事業承継の困難さ:事業の引き継ぎに必要なスキルや経験を後継者が十分に持っていない、あるいは事業承継の過程で経営が不安定化してしまう。
  • 経営資源の不足:経営を継続するために必要な人材や資金、設備が不足している場合。
  • 市場環境の変化:市場や業界の急激な変化によって、利益を上げていても今後の成長が見込めない場合。

2. 「後継者不足問題」
「後継者不足問題」は、特に日本の中小企業において深刻な問題となっています。多くの中小企業は創業者やその家族が経営しており、事業承継は基本的に家族内で行われるのが一般的です。
しかし、近年では以下のような理由から、後継者不足が深刻化しています:
  • 若者の都市部への流出:地方の中小企業は、若者が都市部に移住する傾向が強く、地元に残る人材が少なくなっています。これにより、家業を継ぐ意欲を持つ後継者が不足しているのです。
  • 後継者への関心の低下:特に若い世代は、家業を引き継ぐことに対して興味を示さないことが増えてきています。大企業や安定した職を求める傾向が強く、家業の経営に対する関心が薄れています。
  • 家業の負担感:事業を継ぐには相当な責任が伴い、経営には大きなプレッシャーがかかります。後継者は、過去の経営者が作り上げた事業を維持するだけでなく、新しい経営戦略を打ち出すことが求められるため、その負担に耐えきれず引き継ぎを拒否することが多いです。
  • 高齢化の進行:経営者が高齢化し、事業承継が進まないケースが増えています。特に、経営者が定年を迎えるタイミングと後継者が育成されるタイミングがずれることで、事業の継続が難しくなります。

3. 「黒字廃業」と「後継者不足問題」の関係
「黒字廃業」と「後継者不足問題」の間には深い関係があり、後継者が見つからないことが黒字であっても事業を継続できない直接的な原因となるケースが増えています。具体的にどのように相互作用するのかを詳しく見ていきましょう。 

  1.  後継者不足が直接的に事業の存続を脅かす
    多くの中小企業において、事業の存続は後継者の有無に大きく依存しています。家族経営が主体である企業では、後継者が事業を引き継ぐことが前提となっており、後継者不足が事業承継の障壁となります。後継者が見つからない、または後継者が引き継ぐ意欲がない場合、事業の継続が難しくなり、最終的に廃業せざるを得ないというケースが増えています。
    特に、日本の中小企業においては、経営者が事業を運営している年数が長く、経営のノウハウや業界の知識、企業文化が深く根付いています。このような企業では、経営者が退任した後の事業運営が難しくなり、後継者がいなければ、たとえ黒字経営を続けていたとしても廃業せざるを得ない場合があります。
  2. 事業承継の難しさ
    後継者不足が解消されたとしても、事業承継には多くの困難があります。
    事業承継には以下のような難しさが伴います:

    • 経営のスムーズな引き継ぎの難しさ:事業のノウハウや経営理念を次世代に引き継ぐのは容易ではありません。経営者が長年にわたり培ったスキルや判断力を後継者がすぐに身につけることは難しく、経営が安定しない場合があります。
    • 経営資源の不足:事業承継に必要な経営資源(資金、人材、設備など)が整っていないと、事業の継続が困難になります。後継者が資金繰りや設備投資に苦しむことで、黒字企業でも廃業を選択せざるを得ない状況に陥ることがあります。
    • 事業戦略の違い:後継者が新しい経営方針や戦略を打ち出すことに対して、旧経営陣や従業員が反発することがあります。これが経営の安定性を脅かし、事業がスムーズに継続できない要因となることもあります。
  3. 後継者不足による経営の不安定化
    後継者がいないことが企業の経営に対して「不安定」という印象を与えることがあります。取引先や従業員が「会社の将来はどうなるのか?」と不安を感じると、事業の継続に支障をきたすことがあり、最終的には経営の不安定化を招きます。この不安定さが経営の現場に影響し、黒字であっても廃業に追い込まれる原因となります。
    また、後継者がいないことで経営者が早期に引退を決めると、事業の引き継ぎができず、最終的に事業を売却するか廃業することになります。

4. 解決策

  • 早期の事業承継計画の策定
    事業承継の問題は時間がかかるため、できるだけ早期に承継計画を策定することが重要です。後継者が見つからない場合でも、企業は事業継続に向けた戦略を立てることができます。
    (1) 後継者候補の育成
    後継者がいない企業では、次世代の経営者を育成することが最も重要です。後継者を育成する方法として、次のような取り組みが効果的です:
    ・社内育成プログラム:社内の有望な人材を早期に発掘し、経営ノウハウや業務知識を一貫して提供することで、後継者を育てる。
    ・外部専門家のサポート:外部のコンサルタントや専門家を雇い、経営の実践的なノウハウやスキルを後継者に伝授してもらう。特に、経営計画や戦略の立案においてサポートを受けることが有益です。
    ・次世代経営者の選定:若手社員の中から後継者を選定し、特別なトレーニングや教育プログラムを提供して、将来の経営を担える人材に育てる。
    (2) 後継者の関心を引き出す
    後継者が事業承継に関心を持たない場合、家族内でのコミュニケーションを改善し、承継に対する理解を深めてもらう必要があります。次のような方法があります:
    ・家族との話し合い:事業の将来についてオープンに話し合い、後継者に事業承継の意義や経営の魅力を伝えることが大切です。
    ・報酬制度の見直し:後継者に対して事業承継のインセンティブとなるような報酬や条件を整備し、経済的に魅力を持たせることも一つの方法です。
  • 外部の支援を活用する
    事業承継や経営改善においては、外部の専門家や機関の支援を受けることが非常に有効です。特に、後継者不足の問題や経営資源の不足を補うためには、外部の力を借りることが重要です。
    (1) 事業承継支援の専門機関を利用する
    政府や地方自治体、商工会議所などが提供する事業承継支援制度を活用することで、後継者育成や事業継続のためのアドバイスを受けることができます。これらの支援機関は、事業承継に関するノウハウや法律面、税務面のアドバイスを提供することができ、企業がスムーズに承継計画を進めるための手助けとなります。
    (2) M&A(企業の合併・買収)を活用する
    後継者不足によって事業継続が困難な場合、M&A(合併・買収)を利用して事業を存続させることができます。M&Aは、外部の企業が買収する形で事業を引き継ぐ方法であり、後継者不足を補う非常に有効な手段です。
    ・M&Aによる企業存続:後継者が見つからず、事業が廃業寸前に追い込まれるケースにおいて、M&Aを通じて他の企業が経営権を引き継ぐことができます。これにより、事業が存続し、従業員の雇用も守られます。
    ・経営資源の補完:M&Aにより、他社が持っている経営資源(資金、人材、技術など)を活用することができます。特に、事業が黒字であっても資金や経営資源が不足している場合、M&Aにより安定した経営基盤を確立することが可能です。
    (3) 事業再生支援サービス
    事業が黒字であっても、事業の継続に必要な資金や経営資源が不足している場合、専門的な事業再生支援を受けることで、経営の安定を図ることができます。専門家による経営改善計画の策定、資金調達支援、債務整理などの支援を通じて、事業の再生を目指すことができます。
  • 後継者不足の解消策としての事業承継型M&A
    後継者不足に悩む企業が、事業承継型M&Aを行うことで、会社を他の企業に売却または統合し、事業の存続を実現する方法です。これは、後継者が見つからない中小企業にとって非常に効果的な解決策となります。
    (1) 事業承継型M&Aの特徴
    ・売却先選定:M&Aによって、企業は他の企業に自社の経営権を譲渡します。譲渡先企業が事業を引き継ぐことにより、企業の経営が存続します。
    ・後継者の経営権移転:事業承継型M&Aでは、経営権を譲渡することで、後継者不足を解消できます。この場合、後継者は外部企業から来るため、後継者の育成や選定の手間が省けます。
    ・従業員の雇用継続:M&Aが成功すれば、従業員の雇用が継続されるため、地域経済にも良い影響を与えることができます。
    (2) M&Aによるメリット
    ・事業の安定性の確保:外部企業に買収されることで、経営資源の補填や安定的な事業運営が可能になります。
    ・企業価値の維持:売却先企業が事業を存続させることで、企業の価値が維持されます。これにより、黒字企業であっても経営の継続性を確保できます。
    (3) 事業承継型M&Aの実施ステップ
    ・M&Aアドバイザーの選定:信頼できるM&Aアドバイザーを選定し、企業の売却プロセスを支援してもらいます。
    ・対象企業の選定:事業承継型M&Aのための適切な買収先を選定します。この際、業界の相性や経営のフィット感を重視します。
    ・交渉・契約締結:交渉を行い、売却契約を締結します。契約内容には、事業の引き継ぎ条件や従業員の雇用継続などが含まれることが多いです。
  • 税務・法律面のサポート
    事業承継には税務や法律の複雑な問題が絡むため、適切な専門家(税理士、弁護士など)のサポートを受けることが不可欠です。
    (1) 税務面での配慮
    事業承継を行う際には、相続税や贈与税、譲渡所得税など、税金が大きな問題となります。税務面の支援を受けることで、最適な承継方法を選ぶことができます。
    (2) 法的アドバイス
    事業承継に関する契約書の作成や合意形成において、法的なアドバイスを受けることで、後々のトラブルを防止できます。

5. まとめ
「黒字廃業」と「後継者不足問題」は密接に関係しており、後継者不足が原因で黒字であっても事業を継続できずに廃業に追い込まれる企業が増えています。企業が廃業を避けるためには、事業承継計画を早期に立て、M&Aなどの選択肢を検討することが重要です。事業の継続と成長のために、後継者の確保や経営資源の強化に取り組むことが、今後の企業存続に欠かせません。

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